特別養子縁組について


特別養子縁組は、すべての子どもが愛情ある家庭で育つことを目的とした子どものための制度です。
縁組の成立にはどのような条件があるのか、普通養子縁組との違いについて説明していきます。


特別養子縁組とは

「特別養子縁組」とは、子どもの福祉の増進を図るために、養子となるお子さんの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。
保護者のない子どもや実親による養育が困難な子どもに温かい家庭を与えるとともに、その子どもの養育に法的安定性を与えることにより、子どもの健全な育成を図ります。
そして、養親になることを望むご夫婦の請求に対し、家庭裁判所の決定を受けることで「特別養子縁組」は成立します。

普通養子縁組との違い

普通養子縁組は、戸籍上において養親とともに実親が並記され、実親と法律上の関係が残る縁組形式です。
特別養子縁組は、子の福祉を積極的に確保する観点から、戸籍の記載が実親子とほぼ同様の縁組形式をとるものとして、昭和62年に成立した縁組形式です。

  普通養子縁組 特別養子縁組
縁組の成立 養親と養子の同意により成立 養親の請求に対し家裁の決定により成立実父母の同意が必要(ただし、実父母が意思を表示できない場合や実父母による虐待など養子となる者の利益を著しく害する理由がある場合は、この限りでない)
要件 ○養親
成年に達した者
○養子
尊属又は養親より年長でない者
○養親:原則25歳以上(夫婦の一方が25歳以上であれば、一方は20歳以上で可)配偶者がある者(夫婦双方とも養親)
○養子:原則、6歳に達していない者
実父母との親族関係 実父母との親族関係は終了しない 実父母との親族関係が終了する
成立までの監護期間 特段の設定はない 6月以上の監護期間を考慮して縁組
離縁 原則、養親及び養子の同意により離縁 養子の利益のため特に必要があるときに養子、実親、検察官の請求により離縁
戸籍の表記 実親の名前が記載され、養子の続柄は「養子(養女)」と記載 実親の名前が記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」等と記載

特別養子縁組の成立要件

特別養子縁組の成立には、以下のような要件を満たした上で、
父母による養子となるお子さんの監護が著しく困難又は不適当であること等の事情がある場合において、
子の利益のため特に必要があると家庭裁判所に認められる必要があります。

実親の同意

養父となるお子さんの父母(実父母)の同意がなければなりません。
ただし、実父母がその意思を表示できない場合又は、実父母による虐待、
悪意の遺棄その他養子となるお子さんの利益を著しく害する事由がある場合は、実父母の同意が不要となることがあります。

養親の年齢

養親となるには配偶者のいる方(夫婦)でなければならず、夫婦共同で縁組をすることになります。
また、養親となる方は25歳以上でなければなりません。
ただし、養親となる夫婦の一方が25歳以上である場合、もう一方は20歳以上であれば養親となることができます。

養子の年齢

養親となる方が家庭裁判所に審判を請求するときに6歳未満である必要があります。
ただし、お子さんが6歳に達する前から養親となる方に監護されていた場合には、
お子さんが8歳に達する前までは、審判を請求することができます。

半年間の監護

縁組成立のためには、養親となる方が養子となるお子さんを6ヵ月以上監護していることが必要です。
そのため、縁組成立前にお子さんと一定の期間を一緒に暮らしていただき、その監護状況等を考慮して、
家庭裁判所が特別養又縁組の成又を決定することになります。

特別養子縁組の流れ

相談開始

お電話やメール、ラインはもとより、面談等含めてお話を伺っていきます。
※どうしても育てるのは難しいということであれば、お子さんがどんな家庭で育ってほしいかなど、 ご希望を聞かせてください。
あなた自身の生活についても一緒に考えていきましょう。
出産が近づいてきた頃、養親候補の仮選定をします。
※すでに産まれていて、お子さんが施設やご自宅にいる場合は状況によって対応します。

出産

出産後、体調が安定したらお気持ちを確認させて頂きます。
※出産後の入院中、お子さんとの過ごし方は自由です。
※縁組を決断された場合、候補の養父母に連絡をし、委託に向けて準備してもらいます。
※出生届は原則、産みのお母さんに提出していただきますが、
手続きはサポートします。
※希望があれば、養父母面会の機会を設定します。

委託

お子さんが養親さんのおうちへ行きます。
※養育が開始されて、最低6か月間の養親さんによる養育期間のあと、 裁判で特別養子縁組が成立となります。
※養親さんが家庭裁判所に特別養子縁組の申し立てをします。

成立

養親さんにお子さんを委託し、新しい生活が始まります。

日本における社会的養護

「社会的養護」とは

社会的養護とは、実の親が何らかの事情で子どもを育てられないときに、実親以外の者が公的な責任で子どもを守り育てていく制度のことです。
社会的養護には、児童養護施設や乳児院などの「施設養護」と、里親やファミリーホームなどの「家庭養護」の2種類があります。
家庭養護に含まれる里親制度には、「親族里親」、「養育里親」、「専門里親」、「養子縁組を希望する里親」の4種類があります。
特別養子縁組制度は「家庭養護」の中の「養子縁組を希望する里親」の一つとして位置づけられています。
いずれも子どものための制度であり、子を希望する親のための制度ではないことを理解することが重要です。

「施設養護」で育てられる子どもたち

日本で社会的養護を必要としている子どもたちの数は、国や行政が把握しているだけでも、約45,000人いると言われています(平成29年3月現在)。
そのうち、児童養護施設に入所中の子どもたちは27,288人、乳児院に入所中の子どもたちは2,901人にのぼる一方、里親に委託されている子どもたちは4,973人に留まっています。
その比率は、おおよそ「施設:里親=8:2」となっており、いわば「施設養護」偏重の社会的養護の形になっています。
その中で、養子縁組里親に委託されている子どもたちは227人です。一方、諸外国を見てみると、社会的養護が必要な子どもたちの40%以上が里親委託されています。

愛着(アタッチメント)形成の重要性

近年では子どもの成育過程についての研究が進み、子どもにとって信頼できる大人と深い愛着関係を築くことが発達の第一段階であることや、心の安定の基盤になることが分かってきました。
愛着関係は「特定の人物」との間に形成されると考えられており、特別養子縁組を行う場合でも、出生後一日でも早く育ての親の手元で愛され育つことで、大人にとっても子どもにとっても深い愛着関係が築けると考えられています。
これら3点の現状から、国としても家庭的な養護を推進しようとしており、「特別養子縁組を行う里親」を含む「里親委託率」を2019年までに22%までに引き上げることを目標に掲げています。

特別養子縁組以外の選択肢について

特別養子縁組以外にも、もしかすると解決の道があるかもしれません。
生活ライフ風の村が出来ることは、子どもが幸せになる道を探すお手伝いです。どの道を選択するのかは産みの親次第です。
産みのお母さん、またはそのご家族が、子どものために一番良いと思う選択肢を一緒に探していきましょう。

施設

一般的に「施設」と呼ばれている所には、乳児院と児童養護施設の2種類があります。
両施設共に、様々な事情から家庭で育つことができない子どもを専門スタッフが24時間体制で保護養育する施設です。

施設

「乳児院」とは、主に1歳未満の乳児(保健上、安定した生活環境の確保その他の理由により、特に必要である場合は幼児も含む。)を入院させて、 養育し、あわせて退院した者について相談やその他援助を行う施設です。
乳児院を出た後は、親元へ戻るか、他の施設へ移るか、里親に委託されるかの3択になります。

児童養護施設

「児童養護施設」とは、主に1歳以上18歳未満の保護者のない児童(乳児を除く。ただし、安定した生活環境の確保その他の理由により、特に必要である場合は乳児も含む。)、 虐待されている児童、その他環境上養護を必要とする児童を入所させ、養護、あわせて退院した者について相談やその他援助を行う施設です。
18歳以降は、施設との関係は希薄になりがちで、子どもは精神的にも経済的にも自立を求められます。

グループホームとファミリーホーム

両施設共に、様々な事情から家庭で育つことができない子どもを養育する施設です。
似たような名前ですが、養育者の生活拠点がどこにあるかにより分類されます。
-「グループホーム(地域小規模児童養護施設)」ー
児童養護施設を小規模化・地域分散化し、家庭的な養育環境に近づけたものです。働く職員の生活拠点は自宅にあるため、家庭的養護に含まれます。
-「ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)」ー
主に里親が母体となっており、里親や元児童養護施設職員などと子どもがひとつ屋根の下で生活を共にします。 職員と子どもは一緒に暮らしているので家庭養護に分類されています。

ひとり親(シングルマザー、シングルファーザー)

行政支援や公的制度を利用し、自分の手で子ども育てていく方法もあります。
近年、様々な事情により「ひとり親家庭」も多くなっており、支援や補助金は従来よりも充実している傾向にあります。
ひとり親家庭の場合は経済的な問題のほかに、家族や周囲からの精神面のサポート体制があるかどうかが重要になってきます。

里親制度

里親制度には4種類あり、「養子縁組を希望する里親」の他に、「養育里親」、「専門里親」、「親族里親」があります。
里親制度は、家庭的な環境下で子どもの愛着関係を形成し、養護をおこなうことを目的としており、子どもは里親の家庭で育ちます。
なお「養子縁組を希望する里親」以外の里親制度では、子どもにかかる生活費等は税金でまかなわれます。